原発

Q12. 原発は安価で安定した電源なのでは?

A. 原発は発電コストが高い発電技術です。現在、日本政府は、原発が他の発電技術に比べて高いことがわかってしまうためか、最新のデータに基づいた発電コストを公表していません。一方、米国などでは、政府が原発の発電コストが高いことを認めています。また、実際に起きた事故などの過去の実態を考慮すれば、原発の経済性や安定性が低いのは明らかです。

<解説>

「原発は安い」という神話

「原子力は安い」という神話は作られたものです。これまで日本政府は、各発電エネルギー技 術のコスト比較を行ってきており、それは原発のコストが一番小さいことを示すためのもので した。日本政府が最後に発電コスト比較を行ったのは、2015年5月11日、経産省が管轄する総合 資源エネルギー調査会のもとに設置された「発電コスト検証ワーキンググループ」においてです。その結果、2011年に政府のコスト検証委員会で行われたコスト計算に比較して原発の発電コス トは10.3円kWh以上へと上昇したものの、引き続き石炭火力(12.9円/kWh)やLNG火力(13.4円/kWh)より安いとしました。

問題のある原発のコスト計算

しかし、このようなコスト計算の結果は、当然、方法論やインプットする数値に大きく依存します。特に、この2015年の政府による発電コスト計算には下記の4つの問題があります。

第一に、原発事故費用が過小に見積もられています。2015年の発電コスト計算では、事故費用が9.1兆円と想定されていました。しかし、2016年度末に、東電1F問題委員会は事故費用を21.5兆円と報告しており(大島2018)、2019年3月には日本経済研究センターは35〜80兆円と試算しています(日本経済センター2019)。

第二に、2015年の発電コスト計算では、原発建設のための資本費も英国などにおける最新の原発の資本費よりかなり低く見積もられています。大島(2018)によると、例えば英国のヒンクリーポイントC原発(2基で33GW)の建設費は、安全対策費などの上昇で、総額 245億ポンド(2014年時点)になっており、単価では約120万円/kWとなります。一方、日本での2015年の「発電コス   ト検証ワーキンググループ」による発電コスト計算では、37万円/kWという極めて低い価格が設定されています。

第三に、2011年以降、化石燃料価格は大きく変化しています。市場価格の変化を考慮して再計算すると結果は大きく異なります。最新の価格で再計算した場合、原発の化石燃料に対する優位性はなくなります。

第四に、安全対策費も増加しています。2015年の「発電コスト検証ワーキンググループ」によ   る発電コスト計算では、安全対策費は1基約1千億円と想定しています。しかし、実際には、安全対策費は1基1300億~2300億円となっています(朝日新聞 2019年8月11日)。また、追加的安全対策のために停止している期間も、個々の原発のコスト計算においては考慮する必要があります(大島 2019)。

実際に、上記を考慮すると、たとえ政府の計算式を用いて再計算しても、その結果は大きく異なります。例えば松久保(2017)によると、経済産業省総合資源エネルギー調査会の2015年発電コスト試算に基づき、2016年における原子力発電、石炭火力発電およびLNG火力発電の発電コストを計算すると、2014年試算では原子力10.1円/kWh~、石炭火力12.34円/kWh、LNG火力13.72円/kWhでしたが、化石燃料価格が低下した2016年時点では原子力10.54円/kWh~、石炭火力11.35円/kWh、LNG火力8.58円/kWhとなります。同じく、松久保(2017)は、原子力の発電コストについて、東京電力福島第一原発事故の事故処理費用等の更なる増額があった場合には11.98円/kWh以上、米国並みの原発建設コストを見込んだ場合には13.58円/kWh以上、事故発生頻度を過去実績に即して計算した場合には12.26~15.14円/kWh以上と計算しています。

本来であれば、上記の4つを考慮した再計算結果を政府が示すべきです。しかし、原発は安いという原発神話を維持するためか、現政権はそのような再計算をしようとしていません。

米国では政府が「原発は高い」と認めている

一方、例えば米国では、毎年、政府機関である米エネルギー情報局(USEIA)が発電コスト比較を更新し、それを公表しています。そこでは、一次エネルギー価格下落や原発の安全対策コス   ト上昇などの最新状況を反映した具体的な発電コストが示されており、近年では原発の価格優位性の低さが明確となっています(表 1 参照)。

表 1     米エネルギー情報局の発電エネルギー技術別発電コスト

 発電コスト(2015 年)発電コスト(2019 年)
通常型石炭火力95.1NA
先進型石炭火力115.7NA
石炭火力(30%CCS)NA104.3
石炭火力(90%CCS)NA98.6
天然ガスコジェネ75.246.3
風力(陸上)73.655.9
風力(洋上)196.9130.4
太陽光125.360.0
原子力95.277.5
出典:USEIA(2015)、 USEIA(2019)

注:2015 年、2019 年ともに USEIA が毎年発表している「均等化発電原価」から引用。2015 年の方は、2020 年時点で稼働している発電施設のコスト(2013 年$/MWh)、2019 年の方は、2023 年時点で稼働している発電施設のコスト(2018 年$/MWh)をそれぞれ示している。米国では、現在、新規の石炭火力発電所建設に対する規制によって、炭素回収・貯留(CCS)を伴わない石炭火力発電所の建設は実質的に不可能になっている。

さらに、毎年、米国での詳細な発電コスト比較を発表している投資アドバイザー会社 Lazard のコスト比較最新版(Lazard 2019)では、原子力の発電コストが 118 ドル/MWh~152 ドル/MWh、石炭火力が66 ドル/MWh~152 ドル/MWh なのに対して、太陽光は32 ドル/MWh~44 ドル/MWh、陸上風力は 28 ドル/MWh~54 ドル/MWh と試算されています。また限界費用(燃料費と人件費を含むメンテナンス費)も試算されており、原子力が 27 ドル/MWh~31 ドル/MWh、石炭が 26 ドル/MWh~41 ドル/MWh なのに対して、風力は 6 ドル/MWh~11 ドル/MWh、太陽光が 3 ドル/MWh~6 ドル/MWh としています。すなわち、原発は新設コストだけではなく、稼働コストでも競争力を失っています。

また、日本のように事故費用などを考慮した場合、原発の価格優位性はより低くなります。さらに、温暖化問題を否定するトランプ大統領が就任するまで、米国政府は、化石燃料の発電コストに対して賦課すべき炭素価格(Social Cost of Carbon)を公表し、企業には、その炭素価格を考慮した経営を要求していました。これを考慮すると、再エネの相対的な優位性はさらに高まります。

原発も故障、トラブル、そして気温上昇で停止

原発は不安定な電源でもあります。日本は、そのような電源に依存したゆえに脆弱なエネルギー供給構造を持ったと考えられます。たとえば 2002 年には東京電力が原発でのトラブルを隠した結果、東京電力が保有するすべての原発が止まり、その夏、電力不足危機が発生しました。2007 年には北陸電力でトラブル隠しや機器故障により志賀原発が長期間停止しました。2011 年東日本大震災によって被災した複数の原発が発電できなくなったことは記憶に新しいです。さらに、欧州では、2018 年と 2019 年の夏、フィンランドやフランスの原発は、海水温度上昇によって稼働を停止したり、出力を低下させたりしています。

このように、原発は巨大な電源であり、そのような電源が何らかのトラブルや気温上昇で計画外に脱落した場合、代替供給源の確保は容易ではありません。1 つの原因(巨大地震や事故隠蔽など)により、複数の原発が一度に停止することもありえます。すなわち、安定供給の面からも経済性の面からも、そして費用計算すら困難な放射性廃棄物処分の面からも、日本の産業にとって好ましい発電エネルギー技術であるとは考えられません。

Q13. 小型や新型の原子炉は有望では?

A. 小型炉も、基本的に大型原発と同じ問題を抱えています。すなわち、技術的に難しく、発電コストが高く、核廃棄物を出すことです。これらの問題が短期間で解決される可能性は極めて小さいです。

<解説>

技術的に難しい

現在開発されている小型炉で一番実用化が近いのは NuScalePower や GE 日立によるもので、いずれも軽水炉を小型化したものです。すなわち、現在の原発と同じようなリスクを持ち、大型   原発よりも経済性は劣ります。また、東芝の小型ナトリウム冷却高速炉(4S)など、小型の高速   炉も一部で研究開発が行われています。しかし、高速炉は、高速増殖炉もんじゅがそうであった   ように、基本的には増殖炉であり 23、技術的に解決すべき問題は極めて多いです。またウランが安価な状況は長く続くと予想されており、経済的な魅力も乏しいです。日本でも、原子力委員会   の岡芳明委員長が、廃炉作業が始まった高速増殖原型炉もんじゅの後継となる高速炉開発、特に   後出のフランスの高速炉「アストリッド」のようなもんじゅと同じナトリウム冷却型に対して「無理なものを研究しても予算と優秀人材を浪費する」との見解を、原子力委員会のメールマガジンで公表しています(毎日新聞 2018 年 9 月 21 日)。

安くなく、フランス政府も開発計画停止

高速炉の場合、ウランを燃やす普通の原発よりも発電コストが高いです。このため米英独は早くに開発から撤退しています。前述のように、2018 年 4 月 12 日に、米原発最大手エクセロンの上級副社長 William Von Hoene が「コストが高すぎるため(小型炉・新型炉を含め)これ以上の米国での新設はないだろう」と発言しています(S&P Global 2018)。

また、日本政府が共同開発を期待していたフランスも次世代原子炉である高速炉「アストリッ   ド」の開発計画を停止すると発表しています(ルモンド 2019 年 8 月 31 日)。すなわち、日本政府はフランス政府に梯子を外された状況です。

危険で廃棄物も発生

米国での 9.11 同時多発テロでは、原発への攻撃が検討されていました。さらに飛行機などによる直接的攻撃だけではなく、サイバー攻撃のリスクが最も大きいのも原発です。実際に、2010年にイランの核施設に対するマルウェアを使ったサイバー攻撃が 2010 年に起きています 24。また、小型で、たとえ「安全」な原発でも、新たな核廃棄物が発生します。その管理を次世代に負   担させることは、「トイレなきマンション」を作り続け、「着陸する場所がない旅客機」を飛ば   し続けることと同じです。

*23

消費する核燃料よりも新たに生成する核燃料のほうが多くなる、つまり転換比が 1 を超える原子炉のことです。有限の天然ウラン資源を有効に利用することができる可能性があるので先進諸国では実現に向けての努力が進められていました。しかし、技術的に難しい、コストが大きい、エネルギー安全保障に対する貢献が小さい、などの理由から米英独は開発を止め、最近、フランスも開発計画停止を発表しました。

経済合理的な判断が必要

より「安全」な小型炉・新型炉の導入には非常に長いタイムスパンと多額のコストを要します。工場生産の原子炉なので、大量生産できるようになれば安くなるでしょうが、その段階に至れる保証はどこにもなく、その段階にいたるまでは価格が高いので、他の安価なエネルギー源(例えば再エネ、LNG など)があるなかでユーザー(買い手)は選択しにくい技術です。また、未解決の廃棄物処理の問題もあり、それらに伴う規制や政治の問題もあります。その間に、再エネへ のコスト競争力は一段と上がります。したがって、小型炉・新型炉に対して、将来的に購入する 可能性があるユーザーが存在すると考えるのは、かなり無理な想定です。再エネと省エネによる 将来のエネルギー構成(変動電源と非変動電源のバランスの良い配置)が見通せるにも関わらず、原子力への投資を続けるのは経済的に見て非合理的です。限られた資源は、集中して効果的なも のに投入すべきです。

*24

Stuxnet というソフトによってイランのウラン精製施設における複数の遠心分離機が使用不可能になりました。犯人は不明ですが、その技術レベルの高さから国家が関わった組織的なものとされています。

Q14. 原発は温暖化対策として必要なのでは?

A. 再エネや省エネがあれば原発は不要です。実際に、温暖化対策のために原発が必要と主張している政府や研究者は世界では圧倒的に少数派です。

<解説>

再エネと省エネで十分かつ経済合理的

原発は、コストという意味でも、導入スピードという意味でも、喫緊の対策が必要とされる温室効果ガス排出の大量削減には役に立ちません。もちろん、極めて大きなリスクや目途が全く立っていない廃棄物処理も問題です。一方、再エネと省エネの大幅導入で、温室効果ガス排出の大量削減は経済合理的に可能です(Lovins et al. 2018;Lovins 2018)。

実際に、国レベルあるいは世界レベルで、原発ゼロとエネルギー転換によって 2050 年に自然エネルギー100%の社会を達成するシナリオの方が旧来の原発や化石燃料に頼るシナリオに比   較して経済的にプラスとなることを示すような研究が複数発表されています(例えば、LUT and EWG 2019)。その大きな要因の一つは、前述のように、原発の発電コストが相対的にも絶対的にも高くなっていることです。

また、再エネが安く、省エネに対するインセンティブが充実している米国などでは、稼働している原発を停止した方が温暖化対策としても投資計画としても好ましい状況になっています(Q12 参照)。すなわち、原発停止によって回避された運転費用を省エネや再エネに投資することによって、稼働を続けた場合よりも CO2 排出量が全体的には減少することが示されています(Lovins 2018)。すなわち、経済性やリスクを考慮した上で温暖化対策に新たな原発が必要という主張は、再エネの発電コスト低下と原発の発電コスト上昇が続く現在においては、新設の場合は言うまでもなく、既設の場合でも説得力に乏しくなっています。

石炭火力発電とセットで導入

原子力発電が導入されれば、石炭火力発電が少なくなると考えている方は多いかと思います。しかし、実際には逆の事が起きています。日本においては、原子力発電所と石炭火力発電所は常に同時に建設・導入されてきました。すなわち、原子力発電と石炭火力発電は常にセットの技術であり、原子力発電の稼働率が下がった場合に、石炭火力発電がバックアップとして使われました。その結果、これまで日本は、1970 年以降、原子力発電を推進しながら一貫して石炭火力発電所を増設し CO2 排出を増やしてきました。

そもそも日本の現自公政権の場合、2018 年の第 5 次エネルギー基本計画において石炭火力を重要な発電エネルギー技術としている規定している段階で、地球温暖化問題を重要と考えてないことが明白です。実際に、現在、石炭火力を大々的に新設しようとしている先進国は日本のみ   です。日本政府が原発推進の部分だけを切り取って賞賛する英国も、石炭火力の 2025 年までのフェーズアウトを決めています。

温暖化対策のためと言っている国も研究者も少数

2015 年のパリ条約の中の約束として気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)に、163 カ国が提出した地球温暖化対策目標の中で「地球温暖化対策として原子力発電」を明示していたのは 11カ国でした。かつその 11 カ国の中で「原子力発電の拡大」を明示していたのは、ベラルーシ、中国、インド、日本、トルコ、アラブ首長国連邦の 6 カ国のみでした(World Nuclear Industry Status Report 2016)。すなわち、「原発は地球温暖化対策に必要」と主張する国は世界の中では少数です。

同様に、地球温暖化対策が重要とする研究者中でも、原発推進者は少数です。例えば、2016 年 12 月、「世界の終末まであと何分」という終末時計で有名な Bulletin of the Atomic Scientist 誌が「気候変動対策における原発の役割」という特集を組んでおり、そこに、「原発を推進する気候科学専門家」として有名なケリー・エマニュエル MIT 教授(ハリケーンの専門家)へのインタビューをまとめた論文があります(Stover 2016)。その論文の中で、エマニュエル教授は、「科学者の中で自分たちのような原発推進派は少数派であり、なおかつ環境保護論者の中でも原発推進派は少数派」とはっきり述べています。

ドイツとイギリスの実情

本 Q&A の Q6 でも述べましたように、日本においてはドイツとイギリスの実情に関して誤解があります。しばしば日本では、「ドイツの CO2 排出削減が停滞しているから脱原発と温暖化対策は両立しない」「原発促進のイギリスの CO2 排出は減少しているので、温暖化対策として原発は必要」という言説が聞かれます。

しかし、ドイツで CO2 排出削減が停滞しているのは、米国でのシェール・ガス革命の影響で、だぶついた石炭が欧州に大量に流入したことに加えて、一部の地域の一部の人々の権益を守るために石炭火力を止められないからです。具体的には、炭鉱や石炭火力発電所をかかえるノルト ライン=ヴェストファーレン(NWH)州の利益団体や政治家の影響力が強いからです。すなわち、省エネルギーや再エネに関する政策とは関係ありません。

また、CO2 排出削減が停滞しているとしても、1990 年比で見れば日本よりもはるかに大きな削減を実現しており、2017 年の CO2 排出は 2016 年よりも減少しています。さらに、2019 年 1 月26 日、ドイツの政府委員会は、2038 年までの石炭火力の全廃を決めました。2038 年という時期に関して議論はあるものの、日本と比べると格段に脱石炭に積極的です。

イギリスで CO2 削減に成功している要因は原子力発電ではありません。英国における原発発電量は、1998 年に最大値を記録したあと、2017 年時点では約 3 割減少しました。それにも関わらず、同期間の CO2 排出量は約 3 割減少しています。すなわち、原発の拡大によって CO2 排出量の大幅削減を実現したのではありません。実際には、温室効果ガス排出量取引制度などの規制   のもと、省エネ、化石燃料発電の減少、石炭から天然ガスへの燃料転換、再エネの導入拡大、などによって CO2 排出削減が実現しています(Q6 の図 5 参照)。

Q15. 原発推進理由が温暖化対策でないとすれば、本当の原発推進理由は何?

A. 米トランプ政権は軍事的安全保障を理由の一つとしてあげています。また、英国では核兵器産業への隠れた補助金だという疑惑が研究者などから指摘されています。この問題に関して日本は曖昧な状況ですが、核拡散防止という意味でも、原発は不要と考えます。

<解説>

米国では政府が軍事的安全保障のために必要と主張

米国では、現在、温暖化懐疑論者であるトランプ米大統領やペリー米エネルギー省長官は、石炭火力と原発に対する政府補助を拡大しようとしています。米国政府は、その理由として「安全保障(national security)」という言葉を使っています。この「安全保障」という言葉には、送電網のレジリエンスや信頼性に資するという意味のほかに、米エネルギー省の文書(USDOE 2018) に明確に記述されているように、核兵器、原子力潜水艦、核不拡散、ウラン濃縮、燃料供給および国際的なパートナーとの交渉などの、米国における軍事的なものを含めた原子力関連全体の施策やインフラを維持するためには民間の原発が必要不可欠という主張が込められています(Heidorn and Brooks 2018)。しかし、このような米エネルギー省による石炭火力と原発の特別な保護政策に対しては、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)が公平性や経済合理性の観点か ら反対しており、その実現は容易ではないとされています(電気新聞 2018 年 1 月 31 日)。

英国政府の原発補助金は核兵器産業保護のためという指摘

2018 年 7 月 3 日に現政権が閣議決定した第 5 次エネルギー基本計画では、地球温暖化対策のために原発を推進することが強調されています。その中で、日本政府がお手本として賞賛しているのが英国です。なぜなら、脱原発を決めたドイツと違って、英国は原発を推進しながら、温室効果ガス排出も減少させているからです。

しかし、英国政府が原発を推進する背景は、それほど単純ではありません。まず、前述のように、英国では、原発ではなく、天然ガスへの燃料転換、省エネおよび再エネの普及などが CO2 の排出減少に大きく貢献しています。実際に、英国における原発発電量は、1998 年に最大値を記録したあと、2017 年時点では約 3 割減少しました。それにも関わらず、同期間の CO2 排出量は約 3 割減少しています。すなわち、原発の拡大によって CO2 排出量の大幅削減を実現したのではありません。また、最近、英国のサセックス大学の一部門であり、世界の科学・技術政策研究やイノベーション政策のメッカとも言える科学政策研究所(SPRU)の研究グループが、「英国   政府が原発を多額の補助金まで出して推進するのは、実質的に国民が払う税金や電気料金を使って核兵器産業を維持するため」という内容のレポートを発表しました(Stirling and Johnstone 2018)。すなわち、原発推進は核兵器産業のためというのがこのレポートの趣旨です(明日香 2019)。この問題に関する日本での議論は低調で、極めて曖昧な状況です。ただし、少なくとも世界における核拡散防止という意味では、原発は不要と考えます。