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エネルギー お知らせ レポート

論文「原発ゼロ・エネルギー転換戦略」における電力需給バランスの検証

「原発ゼロ・エネルギー転換戦略」では、原発を速やかに停止し、石炭・石油発電は2030年までに停止する。また、電力供給における再生可能エネルギー比率は、2030年に40%以上、2050年に100%以上、最終エネルギー消費量および電力消費量は、2030年に2010年比で30%削減、2050年代に最終エネルギー消費量において再生可能エネルギーが占める割合を100%以上とする。
 本研究では、これらが実現された場合の2030年および2050年時点での日本の各地域での1時間毎の電力需給バランスを検証した。その結果、大部分の地域および時間帯で、需給は域内だけで余裕があり、一部の地域では、2030年時点において、特定の季節・時間帯(例:夏や冬の夕方)に、他電力からの送電を利用し、需給に余裕があることが明らかになった。また、給湯器や電気自動車(EV)その他の需要シフトなどを用いたデマンドレスポンス、蓄電池利用などの対応も可能である。
 現在、日本では電力供給力不足解消を名目にした「容量市場」が導入されつつあり、これによる電気代の上昇が予想される。しかし、本研究の結果は、「原発・エネルギー転換戦略」で原発、石炭・石油火力を廃止・停止しても大半の地域で十分な余裕が見られることを示しており、その意味で新市場の必要性は再検討されるべきである。
 すなわち、電力需給の安定性を損わずに、現在の政府の2030年のエネルギー・ミックスを大幅に改定して、日本におけるエネルギー転換を進めることは十分に可能であり、それはCO2排出削減や電気代の低減という意味でも好ましいと考えられる。